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 以下は、帰国してしばらくした頃、縁あって地元の雑誌の編集者から依頼を受け、重い腰をあげてある雑誌に連載した旅行記です。
このペースで書いてるといったい一周完了するまで何年かかるんだろう(ざっと計算すると7・8年かかりそうだった・・・)と不安だったのですが、その雑誌が廃刊になってしまい、連載は数回で中断、原稿の締め切りからは解放されましたが、旅の事を振り返る機会はなくなり、アルバムも閉じられたまま・・・煩雑な日常の中で思い出は封印され、そろそろ風化が始まりかけていました。
 
 ところが何の因果か、今回再び妻に背中を押されてホームページなるものを立ち上げることになり、このホームページ上で旅行記を完結させることになってしまいました。
さてさて、完結までいったい何年かかるやら・・・つたない文章で恥ずかしいのですが、興味のある方は、どうか気長にお付き合い下さいませ。 
 それでは、開幕です。

― その1 もう一度よーく考えてみよー の巻 ―

 妻と二人で世界一周してきた。
 出発した時、世界は二十世紀、僕は三十五、妻は三十。四大陸、四十五カ国をまわって帰国した時、世界は二十一世紀、僕は三十八、妻は三十三になっていた。
 「どうやった?」ときかれたら、「おもしろかったよ」と答える。なんか具体的に尋ねてくれたらそれなりの答えようもあるのだが、二年三ヶ月の長旅を一言で表現しようとすると、そうとしか答えようがない。しかたない。で、ちょっと困るのが「何か変わった?」という質問。「よくわからん。」と答える。

 このような質問をする人というのは、僕らが様々な人や文化や事件との出会いを通して「人生」とか「生と死」とか「愛」とか、そんな類の哲学的永遠の命題に何らかの答えを見出したのではないんか、もしくは以前にもっていた答えが劇的に変化したのではないんか、ということに興味を持っていると思われる。
 でも、妻はともかく、生来物事をあまり深く考える習慣をもたず、どちらかといえばボーっと生活するのを得意としている僕は、旅行中も何かしている時以外はやはりボーっとしていることを好み、日々五感を通して脳に伝わる非日常的情報群を漠然と吸収するだけで、少なくとも積極的に消化しようとは努めていなかったように思われる。そんな僕なので、自分では自分の中の何かがあの旅を通して変わったかどうかということがうまく確認できず、かといって何もかわってないというのも淋しい話なので、一皮むけないまでも、なんか少しはかわっているんじゃないかとも期待してたりして、それが「よくわからん。」という答えになってしまう。

 帰国後も、生来の物事をあまり深く考えない習慣にのっとり、あの旅についてその意味を再考したり総括したりする機会もなく今日にいたってしまった。それが縁あってこの雑誌に僕らの旅行記を連載することになった。「読者を旅へと誘うようなものを書いてほしい」・・・わかりました。これは、「あんたらなんでもすぐ忘れてしまうけん、忘れんうちにあんたらの長旅のこと、もう一度よーく考えてみた方がええよ。」という神様のお導きにちがいない、と勝手に解釈した。

 と、いうことで、次回から旅立ちの時まで遡り、読者の方々ともう一度世界を一周する予定。僕らの訪れた素敵な場所をなるべく沢山紹介したい。僕らの思ったこと、感じたことをなるべく沢山伝えたい。そしたら「旅にでもでてみるかー」と考える読者も現れるかもしれない。そうなればいいなー。だって本当に旅はおもしろいから。
 
そーいえば、先日ひょんなことからあの旅の意味の一つを見つけたような気がする。
 地球に巨大隕石がぶつかる映画を妻と二人TVで観ていた。正確にいうと妻が観ていて僕は漫画本のかたわら、ちらちら眺めていただけだったんだけど・・・
妻がふといった。「もし本当に隕石がぶつかってもシロジ(僕のこと)と一緒なら今死んでもくいはないなあ・・・。」僕は何もいわなかったけど「あーそーだなあー・・・」と思った。
考えてみれば、今のところ僕らには死んでも化けてでるだけの未練はなさそうだ。あの旅は僕の長年の夢だったし、帰国後は二人の希望通り小さいながらも自分達の店をもつこともできた。夫婦喧嘩さえしなかったらストレスとは無縁の生活を送っている。裕福なわけではないが今の生活に満足している自分達を発見する。あの旅は僕らに一つの大きな充足を与えてくれた。これから先、僕らはあまり多くを望まないと思う。二人が元気で仲良く暮らしていければいい。少なくとも今はそう思う。

 僕らは現在、松山で小さな店を開き、世界の民芸品の売買を生業としている。それらは僕らが旅の中で見つけたものばかりで、ある意味この店は僕らの旅の結晶といえるかもしれない。十月末現在、帰国して約九ヶ月、開店して約六ヶ月になるけど、僕らはこの店を通してあの旅と繋がっていて、僕なんかは、未だになんだか旅を続けているような気分で毎日をすごしている。


 以上が、連載第一回目の内容です。ちょっとかっこつけてるのがミエミエで気恥ずかしいですが、まだ旅の余韻が感じられ、のんびりしていた頃です。
 また、日本で暮らしていく以上、ストレスのない生活というのは、今となっては夢のような話で,
その上、相変わらず喧嘩ばっかりしています。

                                         つづく・・ 

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